何人かの人から、「病院経営、病院マネジメントについての授業」について聞かれたのでポストしてみようと思います。
バークレーでは、私の知る限り「病院経営」という名前の授業はないです。「なーんだ」と思われるかもしれませんが、「医療経営、医療に関する経営」という意味では幅広いコースがあると思います。
とりわけ、私がこの2年半の中で、とった病院経営に強く関連する授業をあげてみると、こんな感じだと思います。
−MBAの授業でもあり、MPH(Master of Public Health)の授業でもある授業(MBAの人はMBAとして、MPHの人はMPHとして単位換算できる授業)
0.Healthcare in the 21st Century:この授業は以前はIntroduction of the U.S. healthcare systemという名前でした。アメリカの医療制度における基礎を習う授業、当然のことながら病院などの医療機関が抱えている問題、あり方、うまく行っているところの事例などを習う。これはMBA/MPHの学生は必修で、1年の秋学期という一番つらい時期にかなりしっかりやるので、正直大変ですが、振り返ってみたり、読み返してみると、ここで学んだことがだいぶベースになっているという意識をうけます。いわゆる医療制度の仕組みが分かっていないと、それぞれの意味合い、用語も分からないので。ちなみにMBAだけの学生も取ることができますが2年秋学期の選択科目としてです。
1.Healthcare Marketing:病院などの医療機関、保険(こちらは民間保険ですので)、医療機器、製薬バイオなどにおけるブランディング、マーケティング戦略関係の授業
2.Healthcare Finance:病院などの医療機関、保険、医療機器、製薬バイオなどにおける財務戦略関係の授業
3.Strategic Management of Healthcare Organization:病院などの医療機関、保険、医療機器、製薬バイオなどにおける組織論系の授業
当然製薬会社と医療機関では、組織体やサービス形態、ビジネスモデルなどが異なるので、双方を踏まえながら授業が行われます。School of Public Healthの学生には、医療機関、公的機関、そしてNot-for-the-profitに進む人も多く、そういった意味でも、MBA、MPH双方の単位となる授業は医療機関のウエイトは高くなっています。そういったことに加えて、ビジネスビジネスした雰囲気の人が多いMBAと地域社会、公共医療のあり方などに意識が比較的強い(と私は思う)MPHの人は違った見方があり、その違いがとても勉強になるというよさもあります。医療は「金儲け100%」では決してあるべきではないものですから。
−MBAの授業の中で、結果として、病院経営に強く関わっていたもの
4.Social Sector Solution:これは以前、
ポストさせてもらったものですが、非営利団体にコンサルティングをするという授業。私達がお手伝いをさせていただいたのは、サンフランシスコエリアを中心とする医療機関で、どのように持続的にGrantと呼ばれる寄付金に強く頼らずに持続的にやっていくことができるか、というテーマで経営のあり方についてコンサルティングをチームでさせてもらいました。
5.
Managerial Accounting:これは、授業のなかで比較的大きなウエイトをしめるグループプロジェクトが大学病院におけるものになっています。ちなみに私が習ったSuneel Udpaという先生は、Activity-Based Costing for Hospitals,とよばれる文献を発表していることからも、病院のエリアを得意としています。彼の授業は、Managerial Accountingという名前は付いていますが、会計という枠を超えて、戦略を浸透させる際に、どのように組織を戦略の方向にあわせていくか、そういった中で、Managerial Accountingをベースとした組織評価、インセンティブをどのように適用していくのか、そこの背景にある人の心理はといったところに常に意識がいくので、彼の授業はとても面白いです。
−MPHの授業のなかで、病院「経営」に強く関わっていたもの
6.Independent Study, Healthcare Quality- Evaluation and Improvement:これも以前、
ポストさせてもらったものになります。医療の質をどのように評価し、どのように改善、管理していくかという教授と1:1の授業。医療に対しての理解を深める上でとても有用でした。「Care Experience」という意味での患者満足についての考え方も多く取り上げ、それに関する調査分析を医療機関に協力してもらい、行いました。
7.Capstone Seminar:これは、自主的にテーマを決めて、分析をして担当教授にペーパーを出し、口頭試問を受けるというものです。私は、日本における診断群分類包括評価(DPC)に関することについてさせてもらったため、日本の病院経営に関わったものになりました。
MPHには、医療法とか、医療におけるコミュニケーションとか、IT in Healthcareであるとか病院経営に関わるであろう授業は他にもいくつかあったのですが、授業の時間の兼ね合いであったり、日本への当てはまり感を考えたり(例:医療法)でとらなかったものもいくつかあります。
−その他
8.Health Information Services:これは、School of Informationの授業なのですが、いわゆる情報サービス、とくにWeb2.0+αと医療について考えるという授業でした。病院経営にダイレクトにという部分だけではないですが、例えば患者さんと、病院、医師とのコミュニケーションにおけるInformation Technologyの活用を踏まえての患者満足度や効率性への影響のあり方であるとか。そういった観点で情報サービスをとらえた授業でした。この授業を教えていたRavi Nemanaという教授は本当に頭の切れる先生(かつ人もいい)で、刺激的でした。
こんな感じで病院の経営に強く関連した授業は多くあると思います。いわゆるMBAと違い、MBA/MPHでは、MBA、MPHの授業双方を卒業単位の中でとれること、双方の先生を知れて興味のある分野においてMBAからでもMPHからでもIndependent Studyができること、そして、一学期多いことから、包括的に病院経営に関連する授業が取れるのかなあと思っています(手前味噌ですが)。2回インターンができるため、1回は医療機関でのインターンする学生が多いことや、MPHの多くの医療政策経営専攻の学生が病院フェローとして働くことなどから、病院、医療マネジメントに興味があるのであれば(MBA/MPHにもKaiser Permanenteなどの医療機関で働く人がかなりの割合でいます。)人脈作りという意味でも、MBAだけではなく、MPHとMBA双方を学ぶことでの恩恵は大きいと思います。
当然、すべての授業が毎年あるわけでもないですし、すべての授業が大当たりというわけではないですが、「とてもいい」授業があることは確実だと思います。学校側、MBA/MPHプログラム側も相当授業の質には意識があるように感じられるので、今後ますますいい刺激を受けられるようになるんじゃないかと思います。
posted by は at 11:59| サンフランシスコ ☀|
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